COLUMN
広報とマーケティングの違いとは?|役割・目的・手法の違いを徹底解説
2025.7.21

企業活動において、欠かすことのできない「広報(PR)」と「マーケティング」。どちらも社外とのコミュニケーションを担う重要な機能であり、「情報発信する仕事」として混同されがちですが、実はその目的や役割、手法には大きな違いがあります。 現場で実務にあたっている方の中には、「うちの会社、広報とマーケティングの境界があいまいで…」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか? 特に広報を担当したばかりの方は、「この情報って広報が出すべき? それともマーケティング?」と迷うことも多いかもしれません。 そこで本記事では、広報とマーケティングの違いについて、基礎から整理しつつ、実務で混乱しやすいポイントや、両者が連携すべき理由まで、わかりやすく解説していきます。
目次
1. 広報とは何か? ― 信頼の土台を築く仕事
まずは「広報とは何か?」について、あらためて確認してみましょう。
広報(Public Relations)とは、企業や団体が社会・メディア・消費者・行政など、多様なステークホルダーと良好な関係性を築くためのコミュニケーション活動です。単なる情報発信ではなく、企業の考え方や価値観への「理解」や「共感」を育むことが、広報の本質です。
特に重要なのは、広報が「短期的な売上」ではなく「中長期的な信頼の蓄積」を目指している点。効果が見えにくい側面もありますが、ブランド価値や社会的信用といった企業の“資産”を着実に育てていく活動だといえるでしょう。
主な広報活動の例
プレスリリースの作成・配信(新サービスや企業動向の発表など)
メディア対応(記者からの問い合わせ対応、取材調整、記者会見の実施など)
コーポレートサイトやSNSでの情報発信
危機管理広報(不祥事・トラブル時の対応)
社内広報(社内報、従業員エンゲージメントの促進)
私自身の経験でも、「日頃の広報活動が信頼の土台を築いていたからこそ、トラブル発生時にメディアがこちらの話に耳を傾けてくれた」という場面が何度もありました。広報は“守り”だけでなく、“攻め”にもつながる地道な活動なのです。
そして今、広報の領域にもマーケティング的視点が求められる時代です。伝えたい相手にどう届き、どう行動してもらいたいのか。その設計力が、より一層重要になってきています。
2. マーケティングとは何か? ― 売れる仕組みをつくる戦略
一方、マーケティングとは、商品やサービスが「売れる仕組み」を構築する一連の戦略的な活動です。市場ニーズを把握し、商品企画・価格設定・販路設計・プロモーションを統合的に設計していくのが特徴です。
つまり、マーケティングの目的は「売上・利益の最大化」であり、顧客が「欲しい」と思い、実際に購入するまでの導線を設計することがミッションです。
主なマーケティング活動の例
市場調査・顧客分析(定量・定性リサーチ)
商品企画・開発(ニーズを踏まえた商品づくり)
広告運用(Web広告、SNS広告、テレビCMなど)
キャンペーンの企画・実施
販促施策(ノベルティやポイント還元など)
マーケティングでは、「どの施策が売上に貢献したか」「CVR(コンバージョン率)がどう上がったか」など、数値に基づいた判断が求められます。まさに“行動を促す”ための設計であり、データドリブンな視点が不可欠です。
3. 広報とマーケティングの違い【5つの視点から比較】
以下の5つの観点から、両者の違いを明確にしてみましょう。
3-1. 目的の違い
◇マーケティング: 売上・利益の最大化
広報は「企業としてどう見られたいか」というブランドの姿を社会に伝え、共感を育てます。マーケティングはその信頼をもとに、購入という“行動”へ導く役割を担います。両者が連携すれば、より強いブランドと売上の好循環が生まれます。
3-2. 対象の違い
◇マーケティング: 顧客・見込み顧客
広報は“世の中全体”との関係構築を担い、マーケティングは“買ってくれる人”にフォーカスします。対象は異なれど、企業の印象と購買行動は地続きにあると考えると、両者の連携は不可欠です。
3-3. 発信手法の違い
◇マーケティング:ペイドメディア中心(広告)
広報は信頼性の高い第三者メディアの力を活用し、マーケティングは自社のコントロール下で発信力を最大化します。それぞれの発信手法が持つ“影響力”の違いを理解し、効果的に使い分けることが大切です。
3-4. 効果の現れ方の違い
◇マーケティング:短期的・定量的(売上、CV数)
数字に表れづらい広報の価値は、組織として“信頼される”ための礎です。マーケティングが短期成果を担う一方、広報は持続的な企業価値の構築に貢献しています。
3-5. 情報の「信頼性」の違い
◇マーケティング:自社視点による強い訴求力
同じ情報でも、メディアが紹介することで信頼度は格段に上がります。だからこそ広報は「信頼のレバレッジ」が効く存在なのです。
4. 広報とマーケティングが連携すべき理由
いま、企業の“人格”や“社会との関わり方”が重視される時代になりました。単に「モノがいい」だけでは響かないからこそ、広報とマーケティングの連携による一貫したメッセージ発信が求められています。
たとえば、ある企業が環境配慮の取り組みを新聞で取り上げられた後に、同時期のキャンペーンに予想以上の反響が集まった事例がありました。これは、広報が信頼を醸成し、マーケティングが行動につなげた好例です。
5. なぜ「分けて考える」ことが重要なのか
連携は重要ですが、両者の役割を曖昧にしてはいけません。たとえば…
売上訴求ばかりの発信が、企業イメージを損なう
社会貢献ばかりが強調され、購買に繋がらない
というように、方向性がずれると成果にも悪影響を及ぼします。だからこそ、**“広報は印象設計”、“マーケティングは行動設計”**と、明確に意識した上で戦略を立てることが重要です。
6. 両者の違いを理解して、戦略的に活かすために
実際の現場では、広報とマーケティングを兼務していたり、明確に分かれていないケースも多いでしょう。そんなときこそ、両者の視点を意識的に持ち分けることが求められます。
広報:誰に、どんな印象を持ってもらいたいか(=印象設計)
マーケティング:誰に、どんな行動をしてもらいたいか(=行動設計)
この両輪がかみ合ってこそ、顧客に選ばれる企業になれるのです。私自身も、「印象が整えば、行動も自然と導ける」という経験を何度もしてきました。
7. まとめ|広報とマーケティングの違いを味方に
比較項目 | 広報 | マーケティング |
---|---|---|
目 的 | 信頼・共感の獲得 | 売上・利益の向上 |
対 象 | 社会・メディア・社員など広範囲 | 顧客・見込み顧客 |
発信手法 | オウンド/アーンドメディア中心 | ペイドメディア中心 |
効 果 | 長期的・定性的 | 短期的・定量的 |
信 頼 性 | 高い(第三者評価) | やや低め(自社発信) |
広報とマーケティングは、どちらが上ということではなく、それぞれに異なる目的と強みを持つ存在です。だからこそ、互いの役割を理解し、両方の視点を持つことが、これからの広報には必要不可欠です。
新人広報の方も、最初からすべてを完璧に理解する必要はありません。まずは「この発信は誰にどう届くべきか?」という問いを持つことから始めてみてください。
“伝える”だけでなく、“届かせる”。 そのために、広報とマーケティングの力を掛け合わせていきましょう。
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