COLUMN
B2B商社の広報戦略。経営目標を達成する「何者か」の言語化とメディアリレーションの構築法
2026.2.23
日々、多くの企業の広報担当者様や経営者様と対話をしていると、ある共通の「壁」にぶつかることがあります。それは、「やっていることは多いのに、それが経営のインパクトに繋がっている実感が持てない」という悩みです。 先日、ある歴史あるB2B商社の広報を務める方から、非常に深いご相談をいただきました。 数千もの製品を扱い、長年「お客様の黒子」として信頼を積み上げてきた企業様です。しかし、広報チームの皆様は「自分たちは今、どこに向かって橋を架けるべきなのか」という、アイデンティティと戦略の狭間で揺れていらっしゃいました。 今回は、そんな「多角化するB2B企業」が、いかにして広報を「単なる作業」から「経営の推進装置」へと進化させるべきか、そのヒントを共有したいと思います。
目次
良い広報の悩みは「何者か」という問いから始まる
ご相談いただいた企業様は、すでに社内広報やSNS、イベント運営など、多岐にわたる活動を精力的に行っていらっしゃいました。しかし、悩みは切実でした。
- 「扱う商品が多すぎて、何を主語に発信すればいいか分からない」
- 「マーケティングや人事との役割分担が曖昧で、自分たちの持ち場がどこか迷う」
- 「10年以上、会社のキャッチコピーやカラーが決まっていない」
正直に申し上げると、これは非常に「伸び代」のある、素晴らしい悩みです。
なぜなら、広報が「ニュースリリースを書く人」という枠を超えて、「会社が社会でどう在るべきか」という経営の核心に向き合おうとしている証拠だからです。
B2B商社のように「他社の製品」を届けるビジネスにおいて、最大の差別化要因はスペックではなく、その会社が持つ「思想」や「介在価値」にあります。ここを言語化しないままアクションだけを積み上げても、点と点は繋がらず、社内外に熱量は伝わりにくいものなんですよね。
戦略広報への脱皮:3つの視点
広報相談を通じて私たちが導き出した「進むべき道」は、以下の3点に集約されました。
① 「何者か」を言語化し、一貫性の軸を作る
ビジュアル(ロゴやカラー)が決まらないのは、実はその手前にある「言葉」が定まっていないことが原因であるケースが多いです。「私たちは、何を通じて社会を良くする集団なのか」。この核となるストーリーを言語化することが、すべての広報活動の北極星になります。デザインのルーツを持つ企業であれば、そのDNAをどうエンタープライズ(大手企業)向けのサービスに翻訳するか。この「翻訳作業」こそが広報の真骨頂です。
② 経営目標から逆算して、ターゲットを「絞る」
2030年の売上目標があるのなら、広報もその達成にコミットする必要があります。 「すべての人に届ける」は「誰にも届かない」と同義です。今回は、経営の最優先事項である「大手企業(エンタープライズ)の新規開拓」にリソースを集中させることを提案しました。日経新聞や業界の権威ある媒体へ、「信頼の証」となる露出を戦略的に作っていく。それが営業現場での「格付け」となり、コンペの勝率を変える強力な武器になるのです。
③ 役割の「越境」と「連携」
プロダクトマーケティングが「製品の機能」を語るなら、広報は「製品が導入された先の未来」や「企業の姿勢」を語る。人事が「採用条件」を語るなら、広報は「その組織で働く意義」を社会文脈で語る。 他部署と対立するのではなく、お互いの専門性を敬いながら、一つの大きなストーリーを一緒に編み上げていく。広報は、社内のバラバラな部署を繋ぐ「ハブ」であるべきです。
今日から始める、実践のステップ
「戦略」という言葉は難しく聞こえますが、やるべきことは意外とシンプルです。皆様の会社でも、まずはここから始めてみませんか?
- ステップ1:経営陣へのヒアリング(原点の再確認)
「今、会社が一番喉から手が出るほど欲しい結果は何ですか?」と改めて聞いてみてください。認知度向上ではなく「特定領域の新規リード」かもしれません。 - ステップ2:メディア・マトリックスの作成
「信頼を得るための媒体(例:全国紙)」と「詳細を伝えるための媒体(例:専門誌・オウンドメディア)」を整理しましょう。特にAI時代、検索やAIが正しく自社を推薦してくれるよう、情報量の多いストック型コンテンツを整えることは、もはや必須の守りです。 - ステップ3:記者との「顔が見える」関係構築
いきなり100人に送る必要はありません。自社のストーリーを深く理解してくれそうな記者さん、2〜3名とじっくり向き合うことから始めてください。
最後に:広報は「希望」を翻訳する仕事
広報の仕事は、時に孤独です。成果が見えにくく、「自分たちは何のために動いているんだろう」と夜にふと考えてしまうこともありますよね。
でも、私は信じています。
広報とは、社内に眠っている「想い」や「事実」を、社会が受け取れる「価値」に翻訳して橋を架ける、最高にクリエイティブな仕事です。 今回ご相談いただいた担当者様が、「私たちが何者かを言語化することが、すべての始まりなんですね」と晴れやかな表情で仰ったとき、私も改めてこの仕事の意義を噛み締めました。
一人で抱え込まず、まずは社内の仲間に「私たちの強みって何だと思う?」と問いかけるところから始めてみてください。きっと、新しい物語の種が見つかるはずです。
広報戦略の「壁打ち」をしませんか?
「何から手をつければいいか分からない」「自社の強みを言語化してほしい」といったお悩みをお持ちの皆様へ。 まずはカジュアルにお話ししてみませんか?貴社の経営目標に寄り添い、共に歩むパートナーとして伴走いたします。