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AI時代に価値が上がる広報と下がる広報 〜ChatGPTやGeminiが普及しても、広報の本質は変わらない〜

2026.6.29

「AIによって広報の仕事はなくなるのでしょうか?」
ここ1年ほど、この質問をいただく機会が増えました。ChatGPTやGemini、Perplexity、Google AI Overview(生成AIによる検索結果の要約)などの生成AIが急速に普及し、企業の情報発信のあり方も大きく変わり始めています。

実際に、プレスリリースのたたき台作成やSNS投稿文の作成、記事の要約や競合調査など、これまで広報担当者が時間をかけて行っていた業務の多くをAIが担えるようになりました。その結果、「広報担当者は不要になるのではないか」「PR会社もAIに置き換わるのではないか」といった声も聞かれます。

しかし、20年以上広報に携わり、スタートアップから上場企業まで数多くの広報支援を行ってきた立場から言えば、答えは明確にNOです。むしろ私は、AI時代になったことで広報の価値はさらに高まると考えています。ただし、それはすべての広報ではありません。AIの登場によって、「作業に追われてしまう広報」と、「AIを味方につけて戦略的に動く広報」の二極化が進んでいます。

そして興味深いことに、AI時代だからこそ価値が上がる広報とは、決して何か新しいテクニックを駆使する広報ではありません。むしろ広報が昔から担ってきた「信頼形成」という本質的な役割が、改めて正当に評価され始めているのです。

AIによって企業の選ばれ方はどう変わったのか

これまで企業を探すとき、多くの人はGoogle検索を利用していました。「製造業向けシステム」「採用広報 支援会社」「IPO広報 コンサル」と検索し、複数の企業サイトを見比べながら比較検討していました。

しかし現在はどうでしょうか。

ChatGPTに「製造業向けのDXサービスでおすすめの企業は?」と聞く。Perplexityに「IPO準備企業向けの広報支援会社を比較して」と依頼する。Google検索でもAI Overviewが検索結果の上部に表示され、ユーザーがサイトを訪問する前に回答を提示する。このような行動が急速に一般化しています。

つまり、企業選びのプロセスの中にAIが入り始めているのです。

ここで重要なのは、「AIが何を見て企業を推薦しているか」です。AIは営業担当者の説明を聞きませんし、展示会にも参加しません。代わりに、以下のようなWeb上に存在するデジタルデータを包括的に参照しています。

  • 企業サイト
  • プレスリリース
  • 導入事例
  • オウンドメディア
  • 業界紙の記事
  • 第三者メディアの掲載情報
  • 専門家からの評価

つまりAI時代に重要なのは、AI向けの小手先のテクニックではありません。企業に関する「信頼できる情報」が、どれだけWeb上に蓄積されているかという総合力なのです。

一目でわかる「広報のあり方」決定的な違い

AI時代に作業に追われてしまう広報と、経営に不可欠とされる広報の違いを、5つの評価軸で表にまとめました。

評価軸

作業に終始してしまう広報 AIに追われる状態)

経営から逆算する広報(AIを使いこなす状態)

活動の目的

プレスリリース執筆やSNS投稿といった「作業・手段」そのものが目的になっている

採用、営業支援、IPO準備など「経営課題の解決」から逆算して設計されている

発信の文脈

「新製品を発売しました」という、自社都合の売り込み・機能紹介に終始する

「人手不足」「技術継承」など、社会課題や生活者の関心事との接点を設計する

重視するKPI

掲載件数やPV数など、一時的な「露出の量」だけを追い求める

獲得した掲載(第三者評価)を、営業資料や採用ツールとして活用し「実利」に繋げる

Web上の役割

流れて消えてしまう一過性の情報発信を繰り返す

5年後も検索やAIに参照され続ける、企業の「信頼資産」を蓄積する

AIに仕事を奪われるのではないかと怯え、これまでの作業のみを続ける

AIを優秀なアシスタントとして使いこなし、人間は戦略の意思決定に集中する

注意したい「作業そのものが価値」になっている広報

AIの進化によって、これまで人間が時間をかけて行っていた「作業」のコストは劇的に下がりました。だからこそ、以下のような業務に時間の大半を奪われてしまうのは、非常にもったいない時代になったと言えます。

① リリース配信だけを行う広報

以前はプレスリリースを書けること自体が専門スキルでした。しかし今は製品概要をAIに渡せば、それらしいリリースは数分で完成します。「文章を書く」という作業そのものの価値は確実に下がっています。

② SNS投稿代行だけの広報

SNS運用も同様です。AIは投稿案を大量に生成できます。毎日投稿するだけであれば、人間よりAIの方が圧倒的に速いでしょう。だからこそ、「投稿すること」自体をゴールにしてはいけません。

③ 露出件数だけをKPIにする広報

かつては「今月10媒体に掲載された」という成果報告が評価されることもありました。もちろん、認知度がまだゼロに等しい立ち上げ期において、まずは世の中やAIに存在を知ってもらうために「露出の量」をがむしゃらに追うフェーズは必要です。

しかし、そこからネクストステップへ移行できず、単なる露出件数(量)だけを追い求めてしまうと、経営者が本当に知りたい「その掲載によって採用応募は増えたのか、商談につながったのか」という実利に応えられなくなってしまいます。

④ 社内調整・文章作成だけの広報

社内会議の調整や、綺麗で正確な文章を書く能力は依然として重要です。しかし、それだけでは企業価値は向上しません。広報の本質は文章を書くことではなく、どのテーマを、どの順番で、誰に向けて発信するかという「設計」そのものだからです。

AIの登場は、広報から仕事を奪うものではありません。むしろ、こうした「手元の作業」をAIにアシストしてもらうことで、広報担当者がより重要で輝ける業務にシフトできる大チャンスなのです。

AI時代に真の価値を発揮する「戦略家としての広報」

では、これからの時代に求められる価値ある広報とは何でしょうか。

① 経営課題から逆算する広報

優れた広報は、広報活動そのものを目的にしません。採用強化、営業支援、IPO準備、IR強化など、経営課題から逆算して情報発信を設計します。AIにはできない、「経営の文脈を理解する力」こそが価値を生みます

② 社会との接点を設計する広報

広報の仕事は製品紹介ではありません。社会課題や、生活者の関心事との接点を見つけることです。

例えば製造業向けシステムであれば、「生産管理システムを販売しています」ではなく、「人手不足や技術継承という社会課題を解決しています」という文脈を作る。これが広報の役割です。

【実例:自社の売り込みではなく「社会性」を設計し、テレビ放映とリアルな来店数増を獲得】

弊社が広報を支援した、自動車整備・板金塗装を行う池内自動車様の事例がまさにこの好例です。

同社では、単に「安い・早い」という自社の強みを売り込むのではなく、冬の「雪道事故の注意喚起」や「融雪剤によるサビのリスク」といった、生活者にとってベネフィットのある情報(社会性)を前面に出した企画を設計しました。

この社会的な文脈でアプローチした結果、短期間でテレビ番組やラジオ番組での放映・露出を獲得。さらに重要なのは、単に「テレビに出て認知が広がった」だけで終わらず、放映後に「番組を観た」というお客様からの相談が入り、実際の来店客数の増加という「経営課題の解決(実利)」にまで直結した点です。

③ 第三者評価を獲得する広報

広報の大きな価値の一つが第三者評価の獲得です。新聞、専門誌、業界メディア、有識者が語る企業情報は、企業自身が語る情報よりも圧倒的に信頼されます。これはAI時代になって突然重要になったわけではありません。昔から重要だったものが、AIの推薦アルゴリズムによってさらに可視化されたのです。

④ 情報資産を蓄積する広報

優れた広報は、一回の露出で終わりません。記事、事例、リリース、掲載実績を、企業の資産として積み上げていきます。5年後も使える営業資料になり、採用候補者や投資家が見る。そしてAIも参照する。こうした資産形成型の広報の価値はさらに高まります。

【実例:ネガティブな検索サジェストを、第三者視点の「資産記事」で共感の文脈へ転換】

企業の「評判(レピュテーション)」を資産化する採用広報の領域では、弊社が運営するキャリア価値観メディア『NOZOKIMI』を通じてご支援した、ある大手漢方専門メーカー様の事例が挙げられます。

多くの企業が、口コミサイトでの厳しい評価や、検索エンジンで「会社名 激務」「会社名 ブラック」といったネガティブなキーワードがサジェストされるリスクに頭を悩ませています。実際にWebでその企業様について検索すると、サジェストに「激務」というワードが浮上する状況でした。

しかし、そこから検索したユーザーが目にするのは、第三者メディアであるNOZOKIMIが取材した「入社3年目の若手社員のリアルな成長ストーリー」です。記事内では、数字に対する貪欲さが必要なタフな環境である現実(事実)をねじ曲げることなく伝えつつ、だからこそ得られる成長環境や先輩社員の熱い想いを等身大で描いています。

ネガティブな憶測が先行しやすい検索空間に対して、第三者視点の信頼できるコンテンツをあらかじめ「資産」としてWeb上に先回りして蓄積しておく。そうすることで、自社に本当にマッチする優秀な人材(共感層)へ正しく文脈を転換して届けることが可能になります。

⑤ AIと人間を使い分ける広報

AIは作業を高速化しますが、戦略は作れません。優先順位も決められず、経営判断もできません。AIを優秀なアシスタントとして使いこなしながら、人間が判断する。この組み合わせこそが最も強いのです。

なぜAIは「第三者評価」を重視するのか

ここは多くの企業が誤解しているポイントです。

企業サイトは自社発信です。当然ながら、自社に有利な情報が掲載されています。一方で、業界紙、専門メディア、あるいは信頼できる外部プラットフォームは第三者です。企業に対して一定の取材や検証を行った上で記事化しています。

AIはこうした「第三者情報」を重要な判断材料として扱います。例えば、「おすすめのDX企業を教えて」という質問があったとき、企業サイトだけに情報がある会社よりも、複数の外部メディアや業界紙で肯定的に言及されている会社の方が、AIに推薦される可能性は高くなります。

ただし、これは「自社発信が不要」という意味ではありません。次にご紹介する「土台」があるからこそ、第三者評価が活きるのです。

AIが参照する「情報の3層構造」

AI時代の情報発信を考える際、私たちはよく「情報の3層構造」という考え方をお伝えしています。

  • 第1層:公式発表(すべての土台)
    企業の一次情報。プレスリリース、企業サイト、IR情報、公式コメントなど、正確なデータのベースとなる部分です。
  • 第2層:解説コンテンツ(専門性の理解)
    導入事例、コラム、ホワイトペーパー、開発ストーリーなど、企業の深い文脈を伝える情報です。
  • 第3層:第三者評価(信頼性の担保)
    新聞、専門誌、業界メディア、有識者のコメント、信頼性のある外部メディア記事など。

AI検索最適化(AIO)対策とは、どれか一つを追うものではありません。第1層・第2層の自社発信をしっかりと作り込んだ盤石な土台があるからこそ、第3層の第三者評価を獲得したときにその効果が掛け算で爆発するのです。この3層を地道にWeb上へ積み上げる活動そのものが、未来の選ばれる基準を作ります。

20年間広報をやってきて感じる「変わらない本質」

ここまでAIの話をしてきましたが、実は私は広報の本質は何も変わっていないと思っています。

広報の役割は昔から、「信頼をつくること」「社会との接点をつくること」「第三者評価を獲得すること」でした。

上場企業の広報も、スタートアップの広報も、採用広報も、IPO広報も、本質は同じです。AIが登場したことで、その役割の重要性と価値がより可視化され、見えやすくなっただけなのです。

これからの時代に求められるのは、単にAIをツールとして使える人ではありません。AIを使いこなしながら、経営を理解し、優先順位を決め、社会との接点を設計し、戦略を描ける人です

経営課題を解決するための意思決定は、人間にしかできません。だからこそ、AI時代に価値が上がるのは「作業者としての広報」ではなく、「戦略家としての広報」なのです。

広報×AIを活用して企業成長を加速したい経営者の皆さま

プラスカラーでは、営業、採用、IR、IPO準備など、企業の成長フェーズや経営課題に応じた「戦略広報」をご支援しています。
  ● 「AI時代に自社の広報戦略をどう再構築すべきか」
  ● 「ネガティブな口コミや評判に負けない、信頼される情報資産をどう積
    み上げるべきか」
とお悩みの方は、ぜひお気軽にプラスカラーまでご相談ください。貴社の強みを社会の文脈へと転換し、未来へ残る資産となる広報を共に設計いたします。