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広報コラム

失敗しない広報の始め方。成果を出すための広報戦略と実践ステップ

2025.5.7

近年、企業はもとより、地方自治体や教育機関等など、さまざまなところで「広報を始めたい」「広報活動を強化したい」といったニーズが高まっています。商品・サービスの認知度向上や採用活動の強化、資金調達時の信頼獲得など、広報の目的は多岐にわたります。しかし、思いつきや表面的な施策で始めてしまうと、時間とコストをかけても成果が出ず、早々に挫折してしまうという非常に勿体無いケースも少なくありません。 本記事では、「失敗しない広報の始め方」をテーマに、初めて広報に取り組む企業や団体が押さえておくべき基本的な考え方や、実践すべきステップについて、わかりやすく解説していきます。

よくある「失敗する広報」の3つのパターン

① 戦略設計なしに施策から始めてしまう

「とりあえずSNSを始めてみよう」「話題になっているからTikTokを使ってみよう」といった、“手段先行”の広報は非常に危険です。何を目的に、誰に向けて、どのようなメッセージを発信するのかといった戦略がないままでは、広報活動が迷走し、期待した成果に結びつきません。

たとえば、BtoB企業が「バズらせたい」という一心でYouTubeに挑戦しても、そもそもターゲットがそのプラットフォームにいなければ、効果は薄いでしょう。社内リソースも限られている中で、ミスマッチな手段に労力を割いてしまうのは避けたいところです。

まずは、「広報を通じて何を実現したいのか?」という目的と、そのための戦略を明確にすることが大切です。

② 成功事例を鵜呑みにして真似る

他社の成功事例を参考にすること自体は悪くありませんが、それをそのままコピーしても、自社にとって効果があるとは限りません。

たとえば、IT系スタートアップが資金調達後にPR TIMESで多くのメディアに掲載されたという話を聞き、同じようにリリースを出してみても、取材はおろか掲載すらされない、というケースもあります。これは、企業のニュース性やメディアとの関係性、露出のタイミングが異なるためです。

成功事例の背景には、「なぜうまくいったのか?」という戦略的な設計が必ずあります。そのロジックを読み解いたうえで、自社に合う部分をカスタマイズして取り入れることが重要です。

③ 短期的な効果ばかりを期待する

「プレスリリースを出したのに売上が増えない」「メディア掲載されたのに応募者が来ない」といった短期的な反応だけに目を向けると、広報の本質を見誤ります。

広報は、メディアを通じて“第三者の視点”から情報を伝えることで、企業への信頼を蓄積する行為です。マーケティングや広告と違い、即効性よりも中長期的な影響力が期待される施策であるため、「じわじわと効いてくる」特性を理解しておく必要があります。

広報の効果が実感できるまでには、早くても半年、一般的には1年~2年かかるといわれています。「短距離走」ではなく、「マラソン」として捉える視点が大切です。

成功する広報の始め方:3つのステップ

ステップ①:広報の目的を明確にする

広報の目的は大きく3つに分類できます。

  1. モノ(商品・サービスの認知)
  2. ヒト(採用・ブランディング)
  3. カネ(資金調達・上場)

さらに、「業界内の認知度を上げたい」「自治体や行政との連携を深めたい」「企業のプレゼンスを上場前に高めたい」など、細分化された目的も見えてくるでしょう。目的が明確になれば、次に誰に伝えるべきか(ターゲット)が自然と定まってきます。

ステップ②:ステークホルダー(ターゲット)を定める

「誰に情報を届けたいか?」という問いに答えることが、次の重要なステップです。企業活動にはさまざまな関係者(ステークホルダー)が関わります。

  • 顧客(BtoC/BtoB問わず)
  • 投資家・株主・金融機関
  • メディア関係者
  • 自社社員、採用候補者
  • 業界団体、行政、地域社会 など

広報活動においては、これらのターゲットごとに発信すべきメッセージや媒体が異なります。たとえば、メディア関係者には「ニュースバリューのある情報」、社内向けには「組織の方向性と透明性」、学生には「働きがい」など、それぞれの関心を踏まえた内容が求められます。

ステップ③:目的とターゲットに合った手法を選ぶ

手法の選択は、「目的」と「届けたい相手」に応じて決まります。具体的には以下のような施策があります。

  • プレスリリースの配信
  • メディアリレーションの強化(記者との関係構築)
  • SNSやオウンドメディアでの情報発信
  • 企業ブログ・noteでのストーリーテリング
  • カンファレンス登壇やイベント出展
  • 社内報・社外報の発行
  • 動画コンテンツ制作(採用・ブランディング)

重要なのは「社内リソースとバランスの取れた施策設計」です。すべてを一気にやる必要はありません。最初は「実現可能な手法から着手し、徐々に拡張していく」ことが広報活動を継続するコツです。

広報の効果を可視化する:KGIとKPIの設計

そして広報を始める際のステップとして私たちがもう1つ大事にしていることは、広報のKGI、KPIを設計することです。広報の成果は見えにくいと言われますが、工夫次第で定量的に評価することも可能です。たとえば、以下のような指標が考えられます。

【KGI例】

  • サービスの問い合わせ数増加
  • 採用エントリー数の増加
  • ブランド想起率の向上
  • 認知度調査のスコア向上
  • 投資家面談数/資金調達額

【KPI例】

  • プレスリリース本数/掲載数
  • メディア露出件数
  • SNSフォロワー数・エンゲージメント数
  • オウンドメディアのUU/PV数
  • 取材依頼・講演依頼の数

KGIは定性目標だけでなく、定量目標も設定しましょう。定量にすることで、その目標達成のために何をすれば良いか、施策が明確になることと、結果が評価しやすくなります。
例えば、「サービスの問い合わせ数増加」という定性目標を定量目標にすると、「現在月に2件の問い合わせを、1年後に月10件にまで増やす」ということになります。定量にすることで、より解像度が上がりますよね。
また、1年後に月10件の問い合わせが入るような状態にするために、情報発信頻度をあげた方がいいから、この目標を達成するためのKPIとしてプレスリリースを毎月1本配信し、そのリリースは1ヶ月で1,000PV見られるようにしよう、というように、施策もKPIも設定しやすくなります。


このように数字化することで施策の振り返りがしやすくなり、PDCAを回しやすくなるため、効果もあげやすくなります。
「数字が見えづらい」「結果がわかりにくい」からこそ、KPI/KGIをしっかり設計することで、社内でも広報の意義が理解されやすくなるというメリットもあります。

社内を巻き込む:広報の社内浸透戦略

そして、広報を始める際に意外と見落とされがちなのが、「広報は社内にも発信するもの」という視点です。広報担当者だけが頑張っても、社内の理解と協力がなければ、継続的かつ効果的な広報活動は困難です。

たとえば、記者に取材された際に「社員の誰に話しても情報がブレない」ことが広報の信頼につながります。そのためには、以下のような社内共有が重要です。

  • 広報の目的・目標を社内で定期的に共有する
  • 成果が出たら社内報やミーティングで称賛する
  • メディア掲載時は全社に通知する
  • 各部署から「広報ネタ」を吸い上げる仕組みをつくる

広報を「全社的な活動」として認識してもらうことで、社内の協力体制が整い、より強固な広報活動が可能になります。

外部パートナーを活用するかどうかの判断軸

広報活動を始めるにあたり、「PR会社に頼むべきか?」という相談をよく受けます。これには一長一短があるため、自社の状況を見極めて判断する必要があります。

PR会社を活用するメリット

  • メディアとの豊富なネットワーク
  • プロによる効果的な情報設計とリリース作成
  • 人手不足を補える実行力

一方で、注意点も

  • 自社理解が浅いとメッセージがぼやける
  • 初期費用・月額費用がかかる
  • 社内広報力が育ちにくいケースも

まずは、「社内に戦略を描ける人材がいるか」「継続的に実行できる体制があるか」を見たうえで、必要に応じてパートナーを検討しましょう。

まとめ:広報は“戦略的に”始めるのが成功の鍵

広報は「とりあえず始めてみる」ものではありません。しっかりと戦略を立て、目的とターゲットを明確にしたうえで、最適な手法を選ぶことが成功への第一歩です。

そして、広報の成果はすぐには見えないことも多いため、短期的な効果だけにとらわれず、中長期での価値を見据えて活動を続けていくことが重要です。

「社外に向けた信頼づくり」と「社内に向けた共通認識の形成」――この両輪をうまく回すことができれば、広報は必ず企業にとって大きな武器になります。だからこそ、最初の一歩を丁寧に踏み出し、戦略的に広報をスタートしていきましょう。

失敗しない広報の第一歩を、プロ広報とともに

広報は戦略的に始めた方がよいことはわかったし、そのステップもわかった。しかし、自社に落とし込もうと思った時に、イメージが沸かない、うまく戦略を立てられる気がしない。広報を設計できる人がいない。
もしそのようなお悩みがありましたら、私たち広報のプロにご相談ください。貴社の現状や課題、広報として目指す姿をヒアリングし、一緒に広報戦略を設計させていただきます。また、社内広報力を上げるための広報人材育成も合わせてお任せいただけます。