COLUMN
広報におけるリスク管理とは?企業価値を守るために知っておきたい基礎知識と実践ポイント
2025.5.23

企業や団体にとって、広報活動はブランドイメージの形成や信頼構築に欠かせない重要な役割を担います。しかし、情報発信には常にリスクが伴います。意図しない情報の拡散や誤報、不適切な表現、SNSでの炎上など、広報が原因となるトラブルは少なくありません。 こうした事態を未然に防ぎ、万が一のときにも迅速かつ適切に対応するためには、「リスク管理(リスクマネジメント)」が不可欠です。本記事では、広報活動におけるリスク管理の基本的な考え方から、具体的な対策、そして実践のコツまでをわかりやすく解説します。
目次
広報におけるリスク管理とは?
まず、広報のリスク管理とは、「企業や団体が広報活動を行う中で発生しうるリスクを予測し、その影響を最小限に抑えるための取り組み」を指します。
ここでいうリスクとは、企業の評判を損なう可能性のある出来事全般を指します。具体的には、以下のような例が挙げられます。
- 誤った情報発信による誤解やクレーム
- 社会的配慮に欠けた表現による批判
- 不祥事に対する不適切な対応
- SNSでの炎上
- 内部情報の漏えい
こうしたリスクが現実化した際には、企業の信用が一気に失われ、売上や株価、採用活動にも大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、広報活動においては「リスクをゼロにする」ことは難しくとも、「リスクを見つけ、対策を講じ、適切に対応する体制」を整えることが非常に重要です。
広報リスクの主な種類
広報に関わるリスクは多岐にわたりますが、以下に代表的なものを分類して紹介します。
1. 情報発信リスク
誤解を招く表現や、事実誤認、主観的な表現が含まれた情報の発信は、批判や炎上の引き金になります。特にSNSやプレスリリースは拡散力が高いため、慎重なチェックが必要です。
例:
- プレスリリースに誤った数値を記載
- 特定の属性や個人を揶揄する表現を使用
- 時事問題や災害に無神経な言い回し
2. クライシス対応リスク
企業の不祥事や事故、製品トラブルなどが発生した場合、広報対応の遅れや内容の不備が二次炎上につながることがあります。いわゆる「クライシス・コミュニケーション」が重要になります。
例:
- 謝罪会見での不適切な態度
- 対応が後手に回り、不信感を増幅
- 言い訳や責任逃れに見える発言
3. 社内発信・内部リークリスク
社員による不適切なSNS投稿や、内部情報の漏えいも大きなリスクです。広報部門が把握しきれない情報発信が行われた結果、企業全体の信頼を損ねてしまうことがあります。
例:
- 社員が匿名で社内事情をSNSで暴露
- 発売前の商品情報が外部に流出
- 内部告発がメディアに流れる
リスク管理における広報の役割
広報担当者は、単なる「発信の窓口」ではなく、企業の「評判の守り手」としての重要な役割を果たします。リスク管理の観点では、以下のような業務が求められます。
- リスクの早期発見と評価
- 情報発信前のチェック体制の構築
- 万が一に備えたシミュレーションや対応マニュアルの整備
- 危機発生時の迅速かつ一貫性あるメッセージ発信
- 社内教育によるリスク意識の醸成
これらを日頃から意識的に取り組むことで、リスクを未然に防ぎ、仮に問題が発生しても適切に収束させることが可能になります。
実践的なリスク管理のポイント
では、広報の現場で具体的にどのようなリスク管理を行えばよいのでしょうか。実践に役立つ主要ポイントを紹介します。
1. 情報発信前のチェック体制を整える
文章や発言が公になる前に、「誰が、どのような基準で、何を確認するのか」というチェック体制を明確にしておくことが基本です。
チェックポイント例:
- 事実関係(数字・名前・日付など)の正確性
- 差別的・攻撃的・政治的な表現の有無
- 社会情勢との整合性(時事的配慮)
- コンテキストによって誤解を生まないかどうか
広報部内での「ダブルチェック」や、他部署からの目線によるチェックを加えることで、リスクの見落としを減らせます。
2. メディアトレーニングの実施
経営層や広報担当者に対して、緊急時に記者会見やメディア対応を行うスキルを磨いておくことも重要です。
メディアトレーニングで得られる効果:
- 難しい質問にも落ち着いて対応できるようになる
- 誤解を招かないメッセージの伝え方を習得できる
- 表情や態度、言葉の選び方を意識できるようになる
いざという時に備え、定期的に模擬会見やロールプレイを行うことで、緊急対応力を高めることができます。
3. 危機発生時の対応マニュアルを整備
トラブルや炎上が発生した場合に備え、初動対応やメッセージ作成のフローをあらかじめ定めておくことで、混乱を最小限に抑えられます。
マニュアルに含めるべき項目:
- 情報の収集・確認フロー
- 社内外のステークホルダーへの報告手順
- メディア対応のテンプレート(コメント・謝罪文など)
- SNSでの対応ルールと監視体制
事前準備があることで、実際のトラブル時に迅速で一貫性ある対応が可能になります。
4. SNSリスクへの対応
企業公式アカウントはもちろん、社員の個人アカウントからの発信も企業リスクに直結します。SNSリスクを軽視せず、ルールと教育の両面で対応しましょう。
SNSガイドラインに含めるべき事項:
- 発信可能な内容とNG事項の明示
- 個人と業務の境界線の理解
- ハッシュタグや画像の取り扱いルール
- 感情的な投稿・時事ネタへの注意喚起
あわせて、SNS上で自社についての言及を定期的にモニタリングし、兆候を早期に察知する仕組みも重要です。
広報リスク管理を社内に浸透させるには?
広報部門だけでリスク管理を完結するのは難しく、社内全体での意識共有が欠かせません。そのためには、以下のような取り組みが効果的です。
- 広報ガイドラインの作成と共有
- 社員向けの情報発信に関する研修の実施
- 定期的なインシデント共有会(事例共有)
- 社内ポータル等での注意喚起コンテンツ発信
また、広報部門が積極的に社内の窓口として機能し、他部署からも相談されやすい関係性を築いておくことが、早期発見・早期対応のカギになります。
まとめ|リスクに強い広報は、企業を守る防波堤
広報活動には「企業の魅力を伝える」役割と同時に、「企業を守る」役割も求められます。特に現代は、情報の拡散スピードがかつてないほど速く、ひとたび問題が起これば社会的信頼が一瞬で失われる可能性があります。
だからこそ、広報担当者は常にリスクに目を向け、未然に防ぎ、万が一のときも冷静かつ誠実に対応する力が求められます。リスク管理は難しそうに思えるかもしれませんが、「日頃の準備」と「社内の連携体制」が整っていれば、確実に対応力は高まります。
広報の力で、企業をより強く、信頼される存在に。リスクに備える広報のあり方を、ぜひ日々の業務の中に取り入れてみてください。
広報リスク管理に備えるために
広報リスクへの備えは、企業の信頼を守る第一歩です。当社では、危機管理広報やメディア対応の体制構築を含む広報支援サービスを提供しています。万が一の事態に備えた安心のサポートをお求めの方は、ぜひご相談ください。