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令和時代に求められる広報スキル「戦略広報」とは

2024.11.19

テレビ露出や新聞掲載がゴールの時代から、事業貢献につなげるための戦略広報時代へ

最近実施した広報セミナーにご参加いただいた広報さんからのお悩みで、「営業や売り上げにつながる広報施策を求められるが、マーケティングとの切り分けや最適な広報戦略を作るのに悩んでいる」というご相談をいただきました。

広報におけるゴール、成功の鍵は何か?と問われると、「テレビや新聞などのマスメディアに露出すること」という答えが今までは主流でしたが、最近では、「売り上げや問い合わせにつながること」が広報成果として求められるという広報さんも少なくありません。
広報とは、自社を取り巻くステークホルダー(顧客、従業員、株主、地域社会など)との間に良好な関係を築くために、双方向のコミュニケーションを行う活動にことをいいます。「関係構築すること」「信頼関係を築くためのコミュニケーションをすること」が活動の主軸となるため、営業やマーケティングのように数字でわかりやすく成果が計れるわけではなく、また、短期的に成果が出るものではないということから、広報が具体的な数字成果を求められることはあまりなかったと記憶しています。

しかし最近では、マスメディアに取り上げられたことによる売り上げ増加や、SNS活用による顧客増及びファン化の促進など、広告費を使わずとも自らの情報発信により事業活性化に貢献する事例が増えていること、また、広報施策もデータで効果検証できるツールが出てきていることから、広報にも「事業貢献」への期待が寄せられる時代になってきたと考えられます。

売り上げに寄与する広報活動を求められたらどうする?

では、会社や上司から「売り上げに寄与する広報活動を推進してほしい」というお題が降りてきたら、何から着手し、どのように進めればよいのでしょうか。

そこで重要になるのが「広報戦略」です。

広報戦略は、①広報の目的、②目的達成のための目標=KGI(定性&定量)、③目標達成のための施策、④施策をそれだけ実施するかのKPI の順番で設計していきます。このように戦略を作ることによるメリットは2つ。1つはKPIまで落とし込むことで施策の解像度が上がり、迷わずとにかく進めていけばよい状態になること。もう1つは、KPIに対する施策のワーク/ノットワークが明確になるため振り返りがしやすいこと。これにより、戦略のPDCAを高速で回すことができ、結果設定した目標・目的を達成することにつながっていきます。

具体的な事例に当てはめてみましょう。

<建設会社向けの業務効率化SaaS「Tasukeru-DX」を提供する企業の事例>
①広報の目的
「Tasukeru-DX」の売り上げを前期150%成長させるという事業計画に貢献する広報の実施
②目的達成のための目標=KGI(定性&定量)
 定性:ターゲット顧客である従業員100人以上の建設会社からの問い合わせを増やす
 定量:ターゲット顧客からの新規問い合わせを月に10件、年間120件獲得する
③目標達成のための施策
 ターゲット顧客が見るメディアへの掲載・露出の獲得
 ・日経新聞 年間2回掲載
  ・業界紙 年間6回掲載
 ・専門WEBサイト「建設TIMES」 年間10回掲載
④施策をどれだけ実施するかのKPI
 ・プレスリリース 月4回配信
 ・ターゲットメディアへの架電 月5回
 ・新規メディア開拓(面談実施) 月2媒体
 ・Xへの投稿 毎日1回

※架空の企業様の例となります

もう1つ事例を挙げましょう。
たとえば、新製品の発売に伴うKGIが「3ヶ月以内に市場シェアを10%拡大する」ことであれば、これを達成するためのKPIとして、以下のようなKPIが考えられます。

  • プレスリリースやメディア露出数:新製品の発表をいかに多くのメディアに露出させたか
  • SNSエンゲージメント率:製品に関する投稿や広告がどれだけの反応を引き出したか
  • ウェブサイト訪問数:新製品ページの訪問者数の増減
  • リード獲得数:製品に関心を持った潜在顧客の数

これらのKPIを設計する際には、データに基づいた根拠のある予測が必要です。例えば、SNS分析ツールやGoogle Analyticsを活用することで、ターゲットオーディエンスの行動パターンを理解し、効果的なメッセージングやキャンペーンを展開することが可能になります。こうしたデータドリブンなアプローチにより、広報活動のROI(投資対効果)を最大化することができます。

具体事例のご紹介で、戦略策定のやり方の解像度が少し上がったでしょうか。
目的達成のために何を目標とし、その目標達成のために何をどれだけするか。この「逆算思考」が広報には求められるスキルであるといえます。

広報戦略策定にこれから挑戦しようとお考えの方はぜひ、上記のフレームに当てはめて、より具体的な施策にまで落とし込むことをオススメします。

高速PDCAサイクルで広報戦略を検証する

戦略設計後、広報施策を実行する際にもっとも重要になるのが、PDCAサイクルを回して施策の改善を図るプロセスです。PDCAとは、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)」というプロセスを繰り返しながら、施策の精度を高めていく方法です。

「Plan(計画)」の段階では、データ分析をもとにターゲット層やメディアの選定、メッセージ内容などの具体的な広報施策を策定します。
「Do(実行)」の段階では、計画に基づきプレスリリースやSNSキャンペーンを実施します。この際、実施した施策がどのような成果を上げているかをリアルタイムでモニタリングすることが重要です。
「Check(評価)」の段階では、施策が設定したKPIに対してどの程度効果を発揮しているかを評価します。たとえば、SNSでのエンゲージメントが予想を上回っていれば、そのメッセージがターゲット層に響いている証拠です。逆に、メディア露出が少ない場合は、メディアの選定やタイミング、もしくはメディアさんに提供するネタ・企画を見直す必要があるかもしれません。
「Action(改善)」の段階では、評価結果を踏まえ、次の広報施策を改善していきます。これにより、広報活動は常に進化し、より効果的な結果を生み出すことが可能となります。

このPDCAサイクルを繰り返すことで、広報活動の精度が高まり、最終的なKGIの達成へとつながっていきます。
 

広報効果測定ツールの導入で広報効果をさらに可視化

昨今の広報活動において、データ分析とツールの活用は欠かせません。データに基づいて広報施策を設計し、PDCAサイクルを回すためには、効果的なツールの利用が広報の成功を左右します。ここでは、特に戦略的広報に役立つ主要なツールとその活用法を紹介します。

  • Google Analytics: ウェブサイトへのトラフィックを追跡し、どの広報施策が最も効果的かを評価するために使用されます。特定のキャンペーンにどれだけの訪問者が集まっているか、ユーザーの行動を解析することで、広報活動の修正に役立てます。
  • Hootsuite: SNSの管理ツールとして、複数のプラットフォームにおける投稿を一元管理します。投稿の効果をモニタリングし、ターゲット層に最も反応の良いメッセージをタイムリーに配信できる点が強みです。
  • Meltwater: メディアモニタリングツールとして、自社や競合に関する報道をリアルタイムで把握し、広報戦略の改善や危機管理に役立てます。これにより、メディア露出のパフォーマンスを効果的に評価できます。
  • SNS解析ツール: Twitter AnalyticsやFacebook Insightsなどを活用して、SNS上のオーディエンスの反応やトレンドを分析します。ターゲット層がどのようなコンテンツに興味を持っているかを把握し、よりパーソナライズされた広報活動が可能となります。

こうしたツールを駆使することで、データに基づいた効果的な施策を打ち出し、経営戦略に寄与する広報活動を実現できます。

分析ツールの活用が難しい場合は、独自の評価基準、効果測定方法を採用してもよいでしょう。かつて広報指標としてよく使われていた「広告換算額」でもかまいません。広報の効果測定は「絶対にこれを使わないといけない」というものはありません。

効果測定で重要なことは、「経年で比較すること」。

昨年こういう内容で、これだけの本数の露出が取れた。来年の露出量は昨年の130%を目指す!そのためには、昨年よりもリリース本数をこれだけ増やそう、もしくはリリース本数はそのままに、掲載につながるよう直接アプローチの回数を月1回→2回に変更しよう!など、経年比較することで何をどのように改善すればよいかが把握しやすくなります。

戦略的広報の成功はPDCAの活用にあり

令和時代における広報活動は、データを基に経営戦略や事業計画に紐づいた目標(KGI)を設定し、その目標達成のために効果的な施策とKPIを設計し、PDCAサイクルを回しながら改善を重ねることが鍵となります。これにより、単なるメディア露出に留まらず、企業の成長やブランド価値の向上に貢献する広報が実現します。

広報担当者は、デジタルツールやデータ分析のスキルを磨き、経営戦略と整合性のある広報活動を展開することで、KGIの達成に向けて効果的な戦略を推進していくことが求められます。次のステップとして、PDCAサイクルを活用し、常に改善を図りながら、広報活動の質を高めていくことが重要です。

広報歴20年のベテラン広報による戦略広報セミナー

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